小学一年生の時の、ある雨の朝。
通学途中にある病院の前で、見知らぬおばあさんに頼まれて、病院の入り口まで車イスを押してあげました。
たったそれだけの出来事だったのですが…。
その日の全校集会で、校長先生が突然私の名前を呼び上げました。
何事かと思い、オドオドと壇上に登ると、全校生徒の前で、大げさに私を褒め称えるのです。
今朝の出来事を目撃していたらしいのです。
困ったことに、毎日車イスを押していると勘違いしています。
小心者の私は訂正できませんでした。
その数日後、なんと新聞記者が私の家に取材に来たのです。
そして、病院の前で、あのおばあさんと待ち合わせ、写真撮影しました。
その写真と共に、
「毎日車イスを押してあげる少年」という見出しで、けっこう大きく新聞にのり嬉しかったものの、
子供心にちょっと戸惑ってしまいました。
あのおばあさんは、私以上に戸惑ったことでしょう。